透析患者は慢性的な倦怠感や活動量低下を背景に、身体機能の低下が進行しやすいことが知られています。特に維持透析患者では、筋力低下や心肺機能低下が顕著であり、日常生活動作(ADL)の低下やQOLの低下につながります。
実際に、透析患者は一般人口と比較して身体活動量が著しく低く、その結果として運動耐容能の低下や予後不良と関連することが報告されています(※1)。
このような背景から、透析医療において「リハビリ」を取り入れる重要性が近年注目されています。
透析中に行う運動療法(intradialytic exercise)は、近年多くの研究でその有効性が示されています。
システマティックレビューでは、透析中の運動介入により以下の改善が認められています。
• 最大酸素摂取量(VO2peak)の向上
• 身体機能および運動耐容能の改善
• 透析効率(Kt/V)の向上
さらに、安全性についても、運動実施群と非実施群で有害事象に有意差は認められていません(※1)。
また別のメタアナリシスでは、透析中のリハビリは以下の効果も報告されています。
• 抑うつ症状の軽減
• QOLの改善
• 血圧の低下
(※2)
これらの結果から、透析とリハビリの併用は単なる身体機能改善にとどまらず、包括的な患者アウトカム向上に寄与することが示唆されています。
透析クリニックにリハビリを導入する意義は、大きく3つに整理できます。
透析は週3回、1回4時間程度という長時間治療です。この時間を活用してリハビリを実施することで、患者の追加負担を最小限に抑えながら運動機会を確保できます。
特に外来通院患者では、別途リハビリ通院が困難なケースも多く、透析中の介入は合理的なアプローチといえます。
透析患者はフレイルやサルコペニアのハイリスク群です。運動療法の導入により、筋力低下の進行抑制や身体機能維持が期待できます。
近年の多施設研究でも、透析中運動療法は生活機能の改善に寄与することが示されており、長期予後への影響も期待されています(※3)。
透析クリニックにおいてリハビリを提供することは、単なる付加価値ではなく「医療の質」の向上に直結します。
• ADL維持による入院リスク低減
• 患者満足度の向上
• 多職種連携の強化
これらはクリニック経営の観点からも重要であり、他施設との差別化にもつながります。
透析クリニックでリハビリを導入する際には、以下のポイントが重要です。
透析中は血圧変動や循環動態の変化が起こりやすいため、運動強度の設定やモニタリング体制が不可欠です。
医師、看護師、理学療法士が連携し、個別性の高いプログラムを作成することが重要です。
短期間の介入では効果は限定的であり、継続的な実施によってより大きな改善が得られることが報告されています(※1)。
今後、透析医療は「延命」から「生活の質(QOL)」重視へとシフトしていくと考えられます。
その中でリハビリは、
• 身体機能の維持
• 社会参加の促進
• 医療費抑制
といった多面的な価値を持つ重要な介入となります。
透析クリニックにおいてリハビリを標準的に提供する体制の構築は、今後の腎臓医療における重要なテーマといえるでしょう。
(※1)Intradialytic exercise in hemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis, Kaixiang Sheng,et al.
American Journal of Nephrology, (2014) 40 (5): 478–490.
https://doi.org/10.1159/000368722
(※2)Efficacy and safety of intradialytic exercise in haemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis, Jiang Pu,et al.
BMJ Open, 2019 Jan 21;9(1):e020633
https://doi.org/10.1136/bmjopen-2017-020633
(※3)Effect of intradialytic exercise therapy on life outcomes in maintenance hemodialysis patients: a multicenter study, Haruka Nakano,et al.
Journal of Nephrology, aajaf026
https://doi.org/10.1093/joneph/aajaf026
掲載日:2026/5/1

