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苦手意識は減らせる?!自律神経との意外な関係

はじめに

「人前で話すのが苦手」「初対面の人と話すと緊張する」「なぜか特定の場面で体調が悪くなる」……。こうした「苦手意識」は、性格や気合いの問題だけではありません。実は自律神経の働きが密接に関係している可能性があります。

今回は、日常的な苦手意識と自律神経の関係について、医学的な視点からわかりやすく解説し、どうすれば心身のバランスを整え、苦手意識とうまく付き合えるのかについても紹介していきます。

自律神経とは?身体の“自動調整スイッチ”

自律神経とは、私たちの意思とは無関係に体の状態を自動で調整してくれている神経のことです。心拍、呼吸、消化、体温調整など、生命維持に欠かせない機能を24時間コントロールしています。

自律神経の2つの側面

交感神経:緊張・興奮・活動モード。いわば「戦う神経」。
副交感神経:リラックス・休息モード。いわば「癒す神経」。

この2つがバランスよく働くことで、心も体も健康的な状態を保てます。しかし、ストレスや不安、生活習慣の乱れなどによって、このバランスが崩れてしまうと、心身の不調や過剰な苦手意識につながることがあります。

苦手意識は「自律神経の偏り」が関係している?

苦手な場面に直面すると、「心拍が速くなる」「手に汗をかく」「頭が真っ白になる」といった身体反応が起こることがあります。これは交感神経が過剰に優位になるためです。

ストレス反応と自律神経

苦手意識を感じる場面=脳が「危機」と判断した状態では、交感神経が過剰に働いてしまいます。たとえば、人前で話すことが苦手な人がプレゼン直前になると、動悸や手の震え、冷や汗が出るのは典型的なストレス反応です。

これは本人の意志とは無関係に起こるものであり、自律神経が「無意識のうちに反応」している証拠です。

自律神経と「性格」の関係も?

近年の研究では、自律神経の反応パターンが「性格特性」と関係している可能性が指摘されています。

たとえば、アメリカ心理学会の研究(Thayer et al., 2012)では、自律神経の変動(特に心拍変動:HRV)が「不安傾向の強さ」や「感情制御能力」と関連していることが明らかにされています。

心拍変動が高い=副交感神経がしっかり働いている状態では、不安への耐性も高まり、苦手意識もやわらぐ傾向があるとされています。

苦手意識をやわらげるための自律神経セルフケア

では、自律神経のバランスを整えることで、苦手意識を軽減することは可能なのでしょうか?答えはYESです。以下の方法を取り入れることで、緊張や不安をやわらげ、自律神経のバランスを保つことが期待できます。

1. 腹式呼吸(深呼吸)

ゆっくりとした深い呼吸は、副交感神経を優位にしてくれます。特に吸うよりも吐く時間を長くすることでリラックス効果が高まります。

2. 自律訓練法

「手が温かく感じる」「心臓が静かに打っている」など、身体の状態を言葉にして自己暗示するリラクゼーション法です。神経の緊張をゆるめる効果があるとされています。

3. 軽い運動やストレッチ

ウォーキングやヨガなどの適度な運動は、自律神経の調整に有効です。特に朝日を浴びながらの運動は、セロトニン分泌を促し、心の安定にもつながります。

4. カフェインを控える

コーヒーなどに含まれるカフェインは交感神経を刺激します。不安を感じやすい人は、摂取を控えめにすると落ち着きやすくなります。

心理的トレーニングで「苦手意識」を再構築

自律神経のケアに加えて、認知行動療法(CBT)などの心理的アプローチも、苦手意識を減らすのに有効です。「苦手だと思っていたけど、意外と大丈夫だった」という小さな成功体験の積み重ねが、自律神経の過剰反応を抑える助けになります。

たとえば、「人前で話すのが苦手」な場合、少人数での会話から始め、徐々に慣れていく方法などが推奨されます。

おわりに:苦手意識は「訓練」と「ケア」でやわらぐ

苦手意識は決して「性格のせい」だけではなく、自律神経の状態が大きく影響しています。つまり、「苦手」を感じやすいのは、心と体のバランスが崩れているサインかもしれません。

大切なのは、「自分を責める」のではなく、体の反応を理解して整えていくこと。自律神経を味方につければ、苦手意識も少しずつ薄れていきます。もし長期的に強いストレスや不調を感じる場合には、医療機関での相談や専門家による支援を検討しましょう。

引用・参考文献

Thayer JF, Åhs F, Fredrikson M, Sollers JJ, Wager TD. “A meta-analysis of heart rate variability and neuroimaging studies: implications for heart rate variability as a marker of stress and health.” Neurosci Biobehav Rev. 2012;36(2):747–756.
Lehrer PM, Eddie D. “Dynamic processes in regulation and some implications for biofeedback and biobehavioral interventions.” Appl Psychophysiol Biofeedback. 2013;38(2):143–155.
Tan G, Dao TK, Farmer L, Sutherland RJ, Gevirtz R. “Heart rate variability (HRV) and posttraumatic stress disorder (PTSD): A pilot study.” Appl Psychophysiol Biofeedback. 2011;36(1):27–35.
日本自律神経学会ホームページ(https://www.jsan.jp/)

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