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『廃用症候群』を防ぐ!医療現場で実践できる効果的リハビリ法とは

はじめに

入院や長期臥床、急性期の治療後などに、「動かさない期間」が原因で生じる体の機能低下症候群である廃用症候群。この状態は、筋力低下・関節可動域制限・心肺機能低下・栄養不良・認知・心理的変化など多面的な影響をもたらし、速やかな対応が求められています。リハビリテーション(以下「リハビリ」)を適切に介入することで、機能回復の可能性が高まることが近年、複数の論文で示されています(※1)(※2)。

本コラムでは、医療従事者を対象に、廃用症候群の病態を押さえつつ、「効果的なリハビリテーション戦略」を整理します。具体的には、①病態の理解、②介入タイミング・内容、③現場で実践する上でのポイント、の3構成でお伝えします。

1.廃用症候群とは何か:病態とリスク

廃用症候群とは、動かさない期間(例:長期臥床、活動制限、疾患・手術後安静など)を契機として、身体機能・精神機能・社会機能に広範な低下を来す状態を指します。例えば、筋量・筋力の急速な減少、骨量・骨強度低下、心肺機能の低下、栄養状態の悪化などが挙げられます(※3)。

実際、下肢を14日以上使用制限した実験では、筋力・筋サイズともに有意な低下が報告されており、筋力低下の方が筋サイズ低下よりも影響が大きいことが示されています(※1)。また高齢者では、軽い侵襲や短期間の安静でも廃用症候群を発症しやすく、「低栄養」「低アルブミン血症」「悪液質」を伴うと機能予後が悪くなることが報告されています(※2)。

さらに、廃用症候群による日常生活動作(ADL)低下は転倒、褥瘡、肺炎、長期入院・寝たきり化のリスクを増大させるため、早期介入が必須です(※3)。このように、廃用症候群への対応は「発見」「早期介入」「多面的アプローチ」が肝となります。

2.リハビリテーション介入のタイミングと内容

2-1.早期介入の重要性

廃用症候群に対するリハビリでは、介入までの時間が機能回復に大きく影響します。入院からリハビリ開始までの期間が長いほど、ADL向上の利得が低くなることが示されています(※2)。そのため、入院直後に動かせる環境を整えることが、リハビリ成功のカギです。

2-2.介入内容:筋力・有酸素・バランス・機能訓練

リハビリ内容としては、以下のような複合的アプローチが推奨されます。

・レジスタンス(筋力)トレーニング:筋萎縮や筋力低下を抑制・改善するため。使用制限・安静状態において筋量や機能低下を軽減できる可能性が示されています(※1)。

・有酸素運動・持久力訓練:心肺機能低下・活動耐容能低下に有効。早期の運動介入が「筋萎縮防止」に有効であることが報告されています(※1)。

・バランス・機能的動作訓練:立ち上がり、歩行、日常生活動作への移行をスムーズにするため、早期から座位・立位・歩行へと展開することが重要です。

・栄養・口腔・心理的ケアとの併用:筋萎縮・機能低下のみではなく、栄養不良・口腔機能低下・うつ・閉じこもり傾向なども併発しやすいため、リハビリと併行して対応することが推奨されます(※2)。

2-3.段階的な介入設計

介入にあたっては、次の段階を踏むことで安全かつ効果的になります。

・ウォームアップ/ベッド上軽動作(座位・起き上がり動作)
・筋力・耐久性訓練(レジスタンストレーニング+有酸素)
・機能訓練/活動への移行(立位、歩行、日常動作)
・維持・再発予防フェーズ(自主運動指導・転倒予防・外出促進)

介入強度・頻度は、一般に「中等度~高強度」「週3~5回」「30~60分程度」が推奨されており、長期寝たきりモデルでもこの頻度が筋量・筋力改善に関連しています(※1)。

2-4.安全管理と注意点

廃用症候群患者は基礎疾患・栄養状態・骨折リスク・心肺機能低下などを抱えることが多いため、以下の配慮が必要です。

・動作開始前に筋力・関節可動域・転倒リスク・栄養・骨粗鬆症を評価
・運動開始時は負荷を抑え、「疲労・痛み・変動」がないかモニタリング
・栄養介入・口腔ケア・心理面ケアと並行して実施
・介入内容・記録を標準化し、定期的に見直す

3.現場でリハビリを活かすためのポイント

ポイント1:早期評価・介入の体制整備

入院・入所直後に廃用リスクの高い患者をスクリーニングし、リハビリ・機能訓練を早期に開始できる体制を整えましょう。評価項目としては、ADL(FIM運動項目)、筋力、可動域、栄養指標などが、リハビリ利得と関連しています(※2)。

ポイント2:多職種連携+包括的アプローチ

廃用症候群は筋骨格系のみならず栄養・口腔・心理・心肺など多くの側面を含みます。リハビリ単独ではなく、管理栄養士・歯科衛生士・言語聴覚士・看護師・医師と連携し、包括的なケアを提供することが望まれます(※2)。

ポイント3:持続可能な運用とモニタリングの確立

一度介入を始めただけで終わりにせず、定常的なリハビリ・運動機会を確保することが、転倒・寝たきり化・機能低下予防につながります(※1)(※2)。

・介入記録・改善指標(筋力、歩行速度、ADL得点、転倒発生率など)を定期的にモニタリング
・運動プログラムの進捗をスタッフで共有し、動線や動作環境の適正化を行う
・患者・家族向けの自主運動指導・動作促進プログラムを検討

4.まとめ

廃用症候群への対応は、「動かない」ことによる二次的・三次的障害の連鎖を断ち切ることにあります。適切なリハビリテーションはその中核を担います。

本文で示したように、①早期評価・介入、②筋力・有酸素・機能訓練+栄養・口腔・心理アプローチ、③持続可能な運用体制・モニタリングの3つのポイントを押さえることで、医療従事者は廃用症候群患者の機能低下予防・回復促進に向けた介入を効果的に実行できます。

参考文献

※1 Jessica M Scott, et al. Disuse-Induced Muscle Loss and Rehabilitation: The National Aeronautics and Space Administration Bed Rest Study. Critical Care Explorations,2020.
https://doi.org/10.1097/CCE.0000000000000269

※2 若林 秀隆. 高齢者の廃用症候群の機能予後とリハビリテーション栄養管理.
日本静脈経腸栄養学会誌, 28(5):1045-1052, 2013.
https://doi.org/10.11244/jjspen.28.1045

※3 後藤亮平 他. 廃用症候群入院患者におけるADL能力の向上に影響する要因の検討.
理学療法学, 29(5):751-758, 2014.
https://doi.org/10.1589/rika.29.751

掲載日:2026/1/27

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