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ICU患者の褥瘡を防ぐには?|発生メカニズムから考える除圧の重要性と早期リハビリの役割

はじめに

ICU(集中治療室)では、生命維持を最優先とした治療が行われます。一方で、重症患者特有の合併症として見過ごせないのが褥瘡です。
近年、ICUにおける褥瘡予防の重要性はますます高まっています。人工呼吸器管理や鎮静管理、循環動態の不安定さなどにより、患者は長時間同一姿勢を強いられることが少なくありません。その結果、皮膚や軟部組織への持続的な圧迫が生じ、短期間で褥瘡が発生するケースもあります。
褥瘡は単なる皮膚損傷ではありません。感染症リスクの増加、入院期間の延長、医療コストの増大、QOL低下など、多方面に影響を及ぼします。そのため、ICUにおける褥瘡対策は、重症患者管理の質を左右する重要な要素となっています。
本コラムでは、ICU患者における褥瘡発生メカニズムを整理しながら、除圧の重要性や早期リハビリとの関係について、エビデンスを交えて紹介します。

ICU患者で褥瘡が発生しやすい理由

ICU患者は一般病棟患者と比較して褥瘡発生リスクが高いことが知られています。
その理由として、まず長時間の安静臥床が挙げられます。
褥瘡は、骨突出部とベッド面との間で組織に圧力が加わり続けることで発生します。圧迫により毛細血管の血流が低下すると、組織への酸素供給が障害され、虚血性変化が進行します。さらに圧迫が持続すると細胞壊死に至り、皮膚損傷として顕在化します。
ICUでは鎮静薬や鎮痛薬の使用により自力で体位変換できない患者が多く存在します。
また、
 • 人工呼吸器管理
 • 血管作動薬の使用
 • 循環不全
 • 浮腫
 • 低栄養状態
 • 発熱や感染症
なども褥瘡リスクを高める要因です。
特にショック状態や敗血症患者では、血圧維持のために末梢循環が犠牲となりやすく、外見上は問題がなくても深部組織レベルで損傷が進行している場合があります。
褥瘡は単純な「圧迫の問題」ではなく、全身状態の悪化を反映した病態として捉える視点が重要です。

ICU褥瘡の特徴は「短期間で重症化すること」

一般病棟では数日から数週間かけて形成される褥瘡が、ICU患者ではわずか数十時間で発生する場合があります。
特に注目されているのが医療関連機器褥瘡(Medical Device-Related Pressure Injury:MDRPI)です。
人工呼吸器マスクや気管チューブ固定具、経管チューブ、頸椎カラーなどの医療機器が接触する部位では局所的な圧迫が生じます。
近年の報告では、ICUで発生する褥瘡の一定割合が医療機器関連であるとされており、予防対策の重要性が指摘されています(※1)。
つまりICUにおける褥瘡対策では、仙骨部や踵部のみならず、各種デバイス接触部位の観察が欠かせません。

褥瘡発生のメカニズムを理解する

褥瘡形成には主に「圧迫」「ずれ」「摩擦」「湿潤」の4要素が関与します。

①圧迫

最も基本となる要因です。
骨突出部への持続的な荷重により局所血流が低下します。
特に仙骨、踵、大転子部、肩甲部などに発生しやすいことが知られています。

②ずれ(Shear)

背上げ姿勢では身体が足側に滑ろうとします。
このとき皮膚は固定されたまま深部組織だけが移動し、血管が引き伸ばされます。
その結果、表面以上に深部組織で壊死が進行することがあります。

③摩擦

患者移動時に皮膚表面が繰り返し擦れることで角質層が損傷します。

④湿潤

発汗や失禁により皮膚バリア機能が低下します。
ICU患者では発熱や大量発汗も多く、湿潤環境が形成されやすい傾向があります。
これらの要因が複雑に重なることで褥瘡は発生します。

除圧が褥瘡予防の基本となる

褥瘡予防の中心に位置するのが除圧です。
除圧とは、組織に持続的に加わる圧力を軽減または分散することを指します。
国際ガイドラインでも、適切な体位変換と圧力分散の実施が褥瘡予防の基本戦略として推奨されています(※2)。
実際のICUでは以下のような取り組みが重要です。

●定期的な体位変換

患者状態に応じて体位変換を実施します。
ただし循環動態が不安定な患者では全身状態への影響も考慮しなければなりません。
そのため医師、看護師、リハビリスタッフが協力しながら安全に実施することが求められます。

●圧力分散の活用

体圧分散寝具やポジショニングクッションを適切に使用することで局所圧を軽減できます。

●デバイス接触部位の観察

気管チューブ固定部やマスク接触部などを定期的に確認し、必要に応じて位置調整を行います。
除圧は一時的な対応ではなく、継続的な評価と実践が重要です。

ICUにおける早期リハビリが褥瘡予防につながる

近年、ICU領域では早期リハビリの重要性が広く認識されています。
早期リハビリの主な目的は、
 • ICU-AW(ICUーacquired weakness)の予防
 • 呼吸機能維持
 • ADL低下の予防
 • 退院後のQOLの向上
などですが、褥瘡予防の観点からも有益です。
長時間同一姿勢が続くことは褥瘡発生の最大のリスクです。
そのため離床や座位練習、関節可動域訓練などを実施することで局所への圧力集中を軽減できます。
Schweickertらは、人工呼吸器装着患者への早期リハビリ介入によって身体機能改善が促進されることを報告しています(※3)。
もちろん全ての患者に積極的離床が適応となるわけではありません。
しかし、「安静」が必ずしも最善ではないという考え方は、褥瘡予防においても重要な視点です。

多職種で取り組む褥瘡予防

ICUの褥瘡予防は一職種だけで完結するものではありません。
看護師による皮膚観察、医師による全身管理、管理栄養士による栄養評価、リハビリスタッフによる離床支援など、多職種が連携することで初めて高い予防効果が期待できます。
特にリハビリスタッフは身体機能評価だけでなく、
 • ポジショニング提案
 • 関節拘縮予防
 • 離床プログラム立案
 • 動作能力評価
などを通じて褥瘡予防に大きく関与できます。
ICUでの褥瘡対策は、皮膚だけを診るのではなく患者全体を診る取り組みといえるでしょう。

まとめ

ICU患者における褥瘡は、長時間の安静臥床や循環不全、低栄養、医療機器の使用など複数の要因が重なって発生します。
その予防には、褥瘡発生メカニズムを理解したうえでの除圧が不可欠です。さらに、適切な体位変換や圧力分散、医療機器管理に加え、早期リハビリによる離床支援も重要な役割を果たします。
これからのICU医療では、生命維持だけでなく、その後の機能回復や生活再建を見据えた包括的なケアが求められます。褥瘡予防はその第一歩であり、多職種が連携して継続的に取り組むべき重要な課題といえるでしょう。

参考文献

(※1)A Prospective Window Into Medical Device-Related Pressure Ulcers in Intensive Care, Fiona M Coyer, Nancy A Stotts, Virginia Schmied Blackman.
International Wound Journal. 2014;11(6):656-664.
https://doi.org/10.1111/iwj.12026

(※2)Prevention and treatment of pressure ulcers/injuries: The protocol for the second update of the international Clinical Practice Guideline 2019,
Jan Kottner, et al.
Journal of Tissue Viability; Volume 28, Issue 2, May 2019, Pages 51-58
https://doi.org/10.1016/j.jtv.2019.01.001

(※3)Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial
William D Schweickert, et al.
The Lancet. 2009;373(9678):1874-1882.
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(09)60658-9

掲載日:2026/8/19

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