「廃用症候群」は、長期臥床や活動量低下によって引き起こされる全身機能低下の総称であり、筋力低下や心肺機能低下に加え、「関節拘縮」を引き起こす重要な要因です。
関節拘縮とは、関節可動域(ROM)が制限される状態を指し、日常生活動作(ADL)の著しい低下につながります。特に高齢者や入院患者では、短期間の不動でも拘縮が進行することが知られています。
実際に、不動状態では筋力が急速に低下し、数日から数週間で顕著な機能障害が出現することが報告されています(※1)。さらに、不動により筋や結合組織の柔軟性が低下し、関節可動域制限が進行します(※2)。
このように「廃用」と「拘縮」は密接に関連しており、早期からのリハビリ介入が不可欠です。
廃用による関節拘縮は、単なる筋短縮ではなく、複合的な組織変化によって生じます。
文献によると、不動状態では以下のような変化が生じます。
・筋萎縮(disuse muscle atrophy)
・筋線維の短縮および減少
・結合組織の増生(線維化)
・関節包や靱帯の硬化
これらの変化は、ユビキチン・プロテアソーム系やオートファジーなどの分解系の活性化によって生じるとされています(※2)。
また、低酸素環境や慢性炎症により筋組織の線維化が進行し、関節の柔軟性がさらに低下することも示唆されています(※2)。
このような構造的変化が進行すると、可逆性が低下し、リハビリによる改善が難しくなるため、早期介入が極めて重要です。
廃用症候群による関節拘縮を予防するうえで、「リハビリ」は最も重要な介入の一つです。
特に注目されているのが「早期離床・早期運動」です。
臨床研究では、早期にリハビリを開始することで、廃用症候群の発生リスクが低減し、ADLの維持にも寄与することが示されています(※3)。
また、長期臥床後に実施されたリハビリプログラムでは、段階的な運動介入により筋量や身体機能の回復が認められています(※1)。
これらの結果から、廃用を予防するためには「待つリハビリ」ではなく、「積極的に動かすリハビリ」が重要であるといえます。
関節拘縮に対するリハビリ介入は、多角的なアプローチが必要です。
最も基本的な介入は関節可動域訓練です。自動運動・他動運動を組み合わせ、関節の柔軟性を維持・改善します。
ただし、システマティックレビューでは、単純なストレッチのみでは臨床的に大きな改善効果が得られにくいことも報告されています(※2)。
長時間の伸張刺激を与えることが拘縮改善に有効とされており、ダイナミックスプリントなどを用いた持続的ストレッチが活用されます。
レビューでは、ストレッチ時間の増加と関節可動域の改善に相関があることが示されています(※2)。
廃用による筋萎縮に対しては、筋力トレーニングが有効です。
メタアナリシスでは、レジスタンス運動が不動による筋量減少を有意に抑制することが示されています(※1)。
筋力を維持・改善することで、関節運動の実用性が高まり、拘縮の進行予防にもつながります。
ベッド上での運動だけでなく、座位・立位・歩行といった段階的な活動量の確保が重要です。
特に早期離床は、廃用症候群の進行を防ぐだけでなく、医療コストの削減や在院日数の短縮にも寄与することが報告されています(※3)。
廃用症候群による関節拘縮は、依然として臨床上の大きな課題です。
その理由として、
・早期リハビリ介入の遅れ
・人員不足による介入量の制限
・患者の低活動状態の継続
などが挙げられます。
今後は、リハビリの「量」と「質」の両方を高める取り組みが求められます。
また、近年ではロボットリハビリや遠隔リハビリなどの技術も進展しており、廃用予防の新たな手段として期待されています。
廃用症候群による関節拘縮は、短期間の不動からでも進行する不可逆的な病態です。
しかし、適切なリハビリ介入によって予防・改善が可能であることも多くの研究で示されています。
・早期離床
・継続的な運動
・多面的なリハビリ介入
これらを実践することで、患者の機能予後を大きく改善することができます。
医療従事者にとって、「廃用をつくらない」という視点を持つことが、これからのリハビリ医療においてますます重要になるでしょう。
(※1)Disuse-Induced Muscle Loss and Rehabilitation: The National Aeronautics and Space Administration Bed Rest Study, Jessica M Scott,et al.
Critical Care Explorations, 2(12):p e0269, December 2020.
https://doi.org/10.1097/CCE.0000000000000269
(※2)The mechanisms and treatments of muscular pathological changes in immobilization-induced joint contracture: A literature review, Feng Wang, et al.
Chinese Journal of Traumatology, Volume 22, Issue 2, April 2019, Pages 93-98
https://doi.org/10.1016/j.cjtee.2019.02.001
(※3)Early mobilization reduces the medical care cost and the risk of disuse syndrome in patients with acute osteoporotic vertebral fractures, Masaki Norimoto, et al.
Journal of Clinical Neuroscience, 2021 Nov:93:155-159.
https://doi.org/10.1016/j.jocn.2021.09.011
掲載日:2026/5/11

