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下肢筋の“持久力低下”を見逃さない―リハビリで考える歩行・活動性維持のポイント

1.なぜ今、「下肢筋の持久力」が重要なのか

リハビリテーションの現場では、筋力評価に注目が集まりやすい一方で、「持久力」の視点が十分に重視されていないケースもあります。
しかし実際の生活では、“一回だけ力を出せること”よりも、“動き続けられること”が重要になる場面が少なくありません。

例えば、
・長距離歩行
・買い物
・階段昇降
・家事
・外出
などでは、下肢筋の持久力が大きく関与します。

近年では、高齢者や慢性疾患患者において、下肢筋の持久力低下が活動量低下やフレイル進行、転倒リスク増加に関与することが注目されています。
そのため現在のリハビリでは、「筋力を上げる」だけでなく、“活動を継続できる身体をどう作るか”という視点が重要になっています。

2.筋力と持久力は何が違うのか

リハビリで「筋力」という言葉はよく使われますが、「持久力」は混同されやすい概念です。

筋力とは

筋力とは、筋肉が瞬間的に発揮できる力を指します。

例えば、
・最大筋力
・握力
・立ち上がり能力
などが代表例です。

持久力とは

一方、持久力とは、“一定の活動をどれだけ継続できるか”を示します。

下肢筋の持久力では、
・長時間歩き続ける
・繰り返し立ち座りする
・長く立位を保つ
などが関係します。

つまり、「一度立ち上がれる」ことと、「何度も立ち上がれる」ことは別の能力なのです。
年齢患者では、筋力は比較的保たれていても、持久力低下によって「途中で疲れて歩けなくなる」ケースも少なくありません。

3.下肢筋の持久力低下が引き起こす問題

下肢筋の持久力低下は、単なる疲れやすさだけでなく、生活機能全体に影響を与えます。

活動量低下

持久力が低下すると、「少し動いただけで疲れる」という状態になりやすくなります。

その結果、
・外出頻度低下
・歩行距離短縮
・座位時間増加
などにつながります。

活動量低下が続くと、さらに身体機能低下が進行する悪循環に陥ることがあります。

歩行能力低下

歩行では、瞬間的筋力だけでなく“持続的な筋活動”が必要です。

特に、
・中殿筋
・大腿四頭筋
・下腿三頭筋
などは、歩行中に繰り返し活動しています。

そのため持久力低下があると、
・歩行速度低下
・歩行距離低下
・歩行時ふらつき
などが出現しやすくなります。

転倒リスク増加

持久力低下によって疲労が蓄積すると、姿勢制御能力低下や注意力低下が起こりやすくなります。
特に高齢者では、「後半になると歩き方が崩れる」というケースも少なくありません。
そのため、転倒予防では“筋力強化だけでは不十分”な場合があります。

4.リハビリで考える持久力トレーニング

下肢筋の持久力を高めるリハビリでは、「高負荷を一回行う」より、“中等度負荷を継続する”視点が重要になります。

有酸素運動の重要性

近年では、有酸素運動が身体機能維持に重要であることが広く知られています(※1)。

例えば、
・歩行練習
・自転車エルゴメーター
・トレッドミル
・階段昇降
などは代表的です。

有酸素運動は、
・心肺機能向上
・下肢筋持久力向上
・活動耐容能改善
などにつながる可能性があります。

反復運動の活用

持久力トレーニングでは、“繰り返し動作”も重要です。

例えば、
・反復立ち上がり
・段差昇降
・ステップ運動
などは、日常生活動作に近い形で下肢筋持久力を鍛えやすい特徴があります。

また、「回数」や「継続時間」を指標にすることで、患者自身も変化を実感しやすくなります。

“疲労を評価する”視点

持久力リハビリでは、「どれだけ動けるか」だけでなく、“どの程度疲労するか”も重要です。

例えば、
・後半で歩容が崩れる
・休憩回数が増える
・動作速度が低下する
などは持久力低下のサインとなる可能性があります。

そのため、単発動作評価だけでなく、“継続した活動でどう変化するか”を見る視点が重要です。

5.持久力向上には“活動量”の視点も必要

リハビリ室だけで持久力を改善するには限界があります。
なぜなら、持久力は“日常活動全体”と深く関係しているためです。

「リハビリ中だけ動く」では不十分

例えば、リハビリ中はしっかり歩けても、
・病棟では寝ている時間が長い
・自宅では座位中心
・外出機会が少ない
というケースでは、活動量不足が続いている可能性があります。

そのため現在では、“生活全体で活動量を増やす”視点が重要視されています。

「動かない時間」を減らす

近年では、“座りすぎ”の問題も注目されています。

長時間座位は、
・下肢筋活動低下
・持久力低下
・血流低下
などにつながる可能性があります。

そのため、
・こまめに立つ
・短時間歩行を増やす
・日常動作を積極的に行う
など、“動かない時間を減らす工夫”も重要です。

6.多職種で支える持久力向上リハビリ

理学療法士の役割

理学療法士は、
・身体機能評価
・運動負荷設定
・歩行分析
・疲労評価
などを行います。

特に、「安全に継続できる運動量」を調整することが重要です。

看護師の役割

看護師は日常生活の活動状況を把握しやすく、
・離床状況
・歩行量
・疲労感
などを観察できます。

また、「できる動作は患者自身に行ってもらう」支援も活動量維持につながります。

医師の役割

医師には、
・運動制限判断
・合併症管理
・循環・呼吸状態評価
などが求められます。

特に慢性疾患患者では、安全性を踏まえた運動処方が重要です。

7.これからのリハビリに必要な“持久力”の視点

これまでのリハビリでは、「筋力を改善すること」が中心となる場面も多くありました。

しかし今後は、
・どれだけ長く歩けるか
・どれだけ活動を続けられるか
・疲れず生活できるか
といった“持久力”の視点がさらに重要になると考えられます。

下肢筋の持久力低下は、活動量低下やフレイル、転倒、社会参加制限につながる可能性があります。

だからこそ、
・高負荷トレーニングだけに偏らない
・日常生活活動を重視する
・「動き続けられる身体」を目指す
という考え方が重要です。

リハビリにおける持久力向上は、単なる運動能力改善ではありません。
それは、“患者がその人らしい生活を続けるための支援”につながっているのです。

参考文献

(※1)Physical activity and functional limitations in older adults: a systematic review related to Canada’s Physical Activity Guidelines, Donald H Paterson, Darren Er Warburton
International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 2010 May 11:7:38.
https://doi.org/10.1186/1479-5868-7-38

(※2)A comparison of leg power and leg strength within the InCHIANTI study: which influences mobility more?, Jonathan F Bean, et al.
The Journals of Gerontology: Series A, 2003 Aug;58(8):728-33.
https://doi.org/10.1093/gerona/58.8.m728

掲載日:2026/6/25

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